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免疫と腸内細菌

はじめに

免疫力を高めたり、調節したりする物質を生物反応修飾物質(BRM:Biological Response Modifiers)と言います。もちろん、免疫力を高めるためには、栄養素(現代では特にミネラル、ビタミン、アミノ酸、)も必要なのですが、私は免疫細胞を刺激するには身体にとってある程度、異物でなければ免疫反応が刺激されないと思います。こんな言葉があるのかわかりませんが、「異物度」が重要です。

現在、免疫増強作用があると言われる物質が世の中にはたくさん出回っています。きのこ抽出物質、細菌由来の物質、漢方薬、植物(食物繊維)などいろいろあります。


これらはなぜ免疫力を高めるのでしょうか?その正体は多糖体(糖がたくさん結びついている高分子構造、糖鎖とも言う)です。丸山ワクチンやBCG死菌ワクチンもそうですが、きのこや細菌由来の物質は多糖体でできています。これらは高分子の多糖体で一部にタンパク質が付いているムコ多糖体やリン脂質や脂質と結びついているリポ多糖体などがあります。また、多糖体ならなんでもいいというわけではなく砂糖のような低分子の物は体内に吸収されて一体化してしまうので、高分子の多糖体でなければ異物とならないのです。


多糖体 (グルコポリサッカライド・EPS・糖鎖)

自然治癒力の主役である免疫(免疫の仕組み)は、NK細胞のような「自然免疫系」と、T細胞やB細胞のような「獲得免疫系(獲得免疫系には液性免疫、細胞性免疫の二つがある)」の協働連携によって成り立っています。このなかで、近年、世界中で脚光を浴びている重要な生体反応の一つが自然免疫です。

自然免疫とはマクロファージや好中球などの貪食細胞や抗菌ペプチド産生を中心とした生体防御機構です。この主役を担うのが多糖体(糖鎖)です。例えば、細菌の細胞壁ペプチドグリカンやリポ多糖体などの細菌複合糖質の免疫増強作用は古くから知られていましたが、近年、それらの作用は自然免疫と呼ばれる防御機構によることが明らかになり、アレルギー、癌、自己免疫疾患、動物と微生物の共生などの生命現象に関わることが示され注目を集めています。そしてこれらのペプチドグリカン(細胞壁の主成分であり、ムラミン酸とグルコサミンがβ(1,4)結合したグリカン鎖がペプチド鎖によって架橋された強固な構造。)やリポ多糖体の部分構造であるムラミルジペプチド(MDP)やリピドA がそれぞれ活性の本体であることが明らかにされました。リポ多糖体はグラム陰性菌の細胞表層を形成する複合糖質であり細菌内毒素として広く知られおり、リポ多糖体の活性発現機構や実際の生体防御におけるリポ多糖体の免疫増強作用の役割が明らかにされてきました。しかし、現在多糖体がどのように免疫の機能を高めるのか作用機構は解明されていません。

自然免疫は生体防御に必須であり、獲得免疫の活性化にも重要で、アレルギーや自己免疫疾患などにも深く関連していることから、その機構の解明は重要性を増しています。

では、この高分子の多糖体を、抽出した医薬品ではなく、食品で摂るにはどのようにすれば良いかということになります。私は特にリポ多糖体をたくさん摂れば良いと思っていますが、それにはグラム陰性菌が良いのですが、病気になったり、本人が死んでしまっては意味がないので、平和的に共存している腸内細菌(グラム陽性菌)が好都合なのです。

腸内細菌といえば周知のように乳酸菌です。乳酸菌には多糖体を産生(菌の代謝の結果の産物)する株もあります。また、細胞膜や細胞壁などが多糖体であることなどから、免疫機構を活性化する働きがあるため現在注目されているのです。


腸内細菌の不思議

腸内細菌について最初に解かなければならない疑問とは、細菌の種類によっては、腸内に入れば免疫システムはそれを異物として排除しようとするが、一方で、腸内に100兆個もの細菌が共生状態を作って住んでいる。つまり、腸の中では人間と共生していますが、他の臓器に入れば病気になります(大腸菌も膀胱に入れば膀胱炎を起こします)。つまり腸管で生きている間はなぜ異物として認識されないか、という点です。

人間の血清や腸内分泌物を調べてみると、ある種の腸内細菌に対しては、当然のことがら、抗体ができます。例えば、腸管ビブリオ菌が小腸粘膜内に定着すると、やがて宿主である人間の体内で抗体が作られ、この抗体が腸管の中に排泄され、この抗体の働きによって、腸管ビブリオ菌の増殖はおさえられ、結果的に体外に送り出されてしまいます。しかし、この一連の反応の中でも、腸内固有菌は生き残っていきます。それは腸内の固有菌は、宿主である人間の腸粘膜や粘液と共通の抗原を持っていると言われています。つまり、腸内固有菌の表面にある抗原は、宿主の免疫系によっても異物と認識できないほど、宿主の抗原とよく類似したもの{特にビフィズス菌などの乳酸菌のもつ抗体(菌が獲得した抵抗性)が宿主である人間の腸の粘膜に在る抗体と非常に良く似ている。}を持っているからなのです。
このことがあるから、逆に、腸内細菌は体外に排泄されることがないということになります。

寄生菌で慢性胃炎や胃潰瘍の患者の胃にしばしば見られ、胃癌の原因ともなるヘリコバクターピロリ菌のリポ多糖は常在菌である大腸菌のリポ多糖よりも免疫刺激能が低いことが解明されています。これは寄生菌のリポ多糖体が自然免疫系を活性化せず、その作用を抑制することを示しており、その特徴的なリポ多糖体の構造が病原性に関連しているのではないかと研究されています。また、腸内細菌に対する抗体が、自己免疫の原因になっていることも示唆されています。


一方、腸内では細菌が生きているわけですから、そこでもエネルギー代謝が行われるわけで、宿主が摂取した食餌に含まれる栄養分や腸の分泌物を主な栄養源として発酵することで増殖し、同時にさまざまな代謝物を産生します。ビフィズス菌などの腸内細菌は、ビタミンB群(B1、B2、B6、B12)、ビオチン、ビタミンK、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸などを産生したり、栄養学的に様々な有用成分を作り出していることが解かってきています。また、宿主の腸が分泌物を摂取してアミノ酸などの身体に有用なものに変える菌もいます。このように、腸内細菌は、互いに共生しているだけでなく、宿主である人間と密接な共生関係を築いています。

ただ、最も注目すべきなのは、“生きている”菌がいるわけですから、当然それは“死ぬ”わけです。その死骸は、糞便として体外に排出されます。“生きている”乳酸菌類(乳酸菌のどの部分)が人間の免疫の向上に役立っているとはなかなか解明できない。そのほとんどが“胃で死んでしまう”となれば、乳酸菌類、特にビフィズス菌などが、免疫や健康維持に有効な働きを持つのはなぜなのか、これが問題になってくるわけです。そこで、注目されたのが、菌の死体です。正確に言えば、その細胞を包んでいる細胞膜がカギではないかということになったのです。そして細胞膜を構成しているのは多糖体なのです。
免疫システムは、ヒトにとって自己と非自己を見分ける能力があります。ある種の腸内細菌は、自己と判定されています。未だ不明な点が多いのですが、絶対確実なことが一つあって、腸内細菌が無いと、腸管免疫システムというものが出来上がらないということです。ここに腸内細菌がいて、それが免疫寛容※1という、余り急激な反応をしないように抑えている機能があります。腸内細菌がいないと、この免疫寛容という機能はないことになります。その理由は未だに良く分かっていませんが、T細胞がIgG、IgEといったアレルギー反応を起こすような物質の機能に関与できなくなっているからであることは事実です。しかし、なぜT細胞の機能が失われるのかは不明で、色々と説はあって、ある種のタンパクに対して働くT細胞の活性が除去されてしまうからだとも言われます。
基本的な器官である腸管には、まだまだ不思議なことがたくさんあります。腸管免疫の研究は始まったばかりであり,研究者にとってみれば未解決の課題が数多く残されています。
腸管の免疫システムは、全身の免疫システムとは異なる独自の発達を遂げたものであると言われ、免疫システムだけに限らず、実は腸管の粘膜下層と筋層間に神経叢が形成され、そのニューロンの突起は血管周囲や免疫細胞の周囲に極めて密に分布しています。また、副腎皮質から分泌されるグルココルチコイドなどの種々のホルモンに対するレセプターが免疫細胞にも発現していたりもします。このようなことから腸管は神経系、内分泌系、免疫系が独自に3大ネットワークを構築しているのではないかとも言われています。


腸内細菌の役割について解明されてきたこと

腸の重要な働きが次第に解明され、脳に存在しているはずの神経伝達物質「セロトニン」が腸にも存在する事が解かり、さらに体内のセロトニンの95%が腸で作られていると解かったため、腸は第二の脳とまで言われるようになりました。今では、老人と赤ちゃんの腸内細菌バランス(腸内フローラ)にはあきらかな違いがあり、腸内の悪玉菌(有害菌・腐敗細菌)がつくる毒素によって老化が進むことや「乳酸菌には腸内細菌のバランスを回復する整腸作用に加えて免疫増強作用・発ガン抑制作用・コレステロール抑制作用等がある」などが次々と発表されています。


免疫に大きく貢献する腸内細菌

人の腸に有害な異物が入ってきたとわかると、T細胞とマクロファージ(貪食細胞と呼ばれ、異物を取り込んで消化しほかの免疫細胞に異物の特徴などを知らせる役割を担っています)の働きでB細胞が増殖しIgA抗体産生細胞に分化し「IgA抗体」※2を産生します。
IgA抗体とは病原菌やウイルスを攻撃したり病原菌がつくりだす毒素を無毒化するタンパク質のことです。つまりIgA抗体の産生が活発に行われれば体はかなりの安全性が約束されるというわけです。
ここで注目されるのが乳酸菌などの働きです。乳酸菌のある株にはIgA抗体の産生を活発にする作用があるのです。異物を取り込むマクロファージは乳酸菌もまた異物として取り込み、同時に取り込まれた病原体に対するIgA抗体の産生を促します。
このとき乳酸菌自身に対するIgA抗体はつくられないので乳酸菌を攻撃することはありません。乳酸菌を常に摂取していると、摂取していないときに比べて、病原菌を攻撃するIgA抗体の産生量がずっと多くなることが解かってきました。


腸内細菌と免疫・アレルギーの密接な関係

腸管には100兆個もの微生物が生息していると言われます。そしてその重量は1kgに達するそうです。これら微生物群は腸管免疫系を刺激し、その免疫的環境を左右しています。
最近になり、腸内細菌が免疫系におよぼす影響について多くのことが明らかになってきました。たとえば腸内細菌の生息しない無菌マウスでは、IgAの産生が低く、同様に無菌マウスでは経口免疫寛容が誘導されません。すなわち腸内細菌は、このような腸内免疫系の重要な2つ(IgAの産生、免疫寛容)の特徴的な機能になくてはならないのです。
さらに、免疫遺伝子の個人のタイプ(主要組織適合性複合体(MHC))と腸内細菌のタイプが関係する。そして逆に、腸内細菌のタイプが特定のタイプの抗体産生に影響を与えるといわれている。
また、細菌、抗原の種類によって誘導されるT細胞の種類が異なることが明らかとなっている。T細胞はTh1型およびTh2型※3の2種類があり、このTh1とTh2のバランスがとれている場合には免疫系は正常であるが、Th2へとバランスが傾くとアレルギー、Th1へ傾くと自己免疫疾患になりやすい。免疫系を完全に保つにはTh2/Th1バランス※4が良好である必要がある。
一般にラクトバチルス菌やビフィズス菌などのグラム陽性菌は、T細胞をTh1へと導く。なぜグラム陽性菌がTh1を誘導するかについて、現在その機構が急速に明らかになりつつある。すなわち、抗原提示細胞にToll様受容体※5が存在して、これがTh1, Th2を決めていることが明らかになりつつある。Toll様受容体のなかで、TLR2, TLR4と呼ばれているものが特に関与している。
たとえばグラム陽性菌が侵入すると、細胞壁のペプチドグリカン、リポタイコ酸などを抗原提示細胞上のTLR2やTLR4がそれを認識し、抗原提示細胞はIL-12などのサイトカインを産生する。そしてこのIL-12は、T細胞をTh1型に誘導する。またアレルギーについては、腸内フローラにラクトバチルス菌が多い子供にはアレルギーが少ないことが報告され、腸内細菌パターンがアレルギーの発症に関係するとの可能性が強く主張されている。その理由は、腸内細菌においてグラム陽性菌のラクトバチルス菌はTh1を誘導し、これがアレルギー反応を抑制した結果であろうと考えられている。


腸管粘膜樹状細胞によるIgAクラススイッチ制御 腸内常在菌の役割

生理的条件下でIgAは生体内でもっとも多く生産される免疫グロブリンであり、そのほとんどは粘膜面において分泌型IgAとして生産されます。しかし、なぜIgAクラススイッチ※6が粘膜関連リンパ組織(MALT)で効率的に誘導されるのか、またその生産はどのような機構によって維持されるのかなど、いぜんとして不明な点が多かったのですが、近年、IgAクラススイッチ誘導には粘膜樹状細胞が重要であることや、腸内常在菌が粘膜樹状細胞に特化した機能(腸内常在菌による小腸粘膜樹状細胞の機能修飾)を付与することが報告され、粘膜免疫系における樹状細胞の役割が明らかにされつつあります。(秋田大大学院医学系研究科 生体防御学分野 手塚裕之ら)


腸内細菌に対する抗体が、自己免疫の原因になっている

免疫の老化とは主としてT細胞自体の老化だと言えますが、もう一つは、自己免疫が増えるという現象も生じます。自己免疫というのは、慢性関節リウマチやSLE(全身性エリテマトーデス)、慢性の甲状腺機能低下症である橋本病などがありますが、自分の身体を抗原と見なして攻撃してしまう病気です。これらの自己免疫は、思春期過ぎや年をとってから出てくるものが多いといわれます。つまり、年をとると自然抗体というものが増加します。これは、恐らくある種の腸内細菌の多糖体(糖鎖)に対する抗体だろうと言われています。何が原因かはよくわかっていませんが、老化とともにこの抗体が増えてくるのは確かです。これが、先程も言った自己免疫に関係しているのかもしれないと考える研究者もいます。また、防御システムのひとつであるヒートショックタンパク質※7のHSP60やHSP65にT細胞が反応して抗体ができることもわかっています。これもある種の細菌に対する抗体で、腸内の細菌が関係しているかもしれません。たまたま腸内のバリアが弱くなって抗体ができやすい状況になった場合に、その抗体が自己に反応するようになる、つまり自己免疫に関係してくる可能性が考えられています。動脈硬化もある種の自己免疫が原因のひとつだと考えられてきていますが、それにも関与しているかもしれません。このような方面からの研究も、これから大切になってくるだろうと思います。


腸から考えるアンチエイジング(最近の報告)

腸管免疫が感染症防御の中心をなすだけでなく、免疫寛容や食品アレルギーの改善にも重要な役割を果たしていることが近年解かってきた。腸年齢の若さに比例して、肌や脳も若い傾向があるという調査結果もあり、腸の健康がアンチエイジングに大きく影響することが分かってきた。
京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学教室の吉川敏一教授は、「腸内には様々な腸内細菌が共生し,発酵によって多様な代謝物を作り出している。その中には、体にいいものも悪いものもあるが、それらがシグナルとなって全身の健康に影響していることが最近分かってきた。特に注目しているのは、免疫機構に与える影響で、腸内細菌の抗ウイルス作用の検証等も進めている」と話す。そこで、腸内細菌にも関係のある、腸のアンチエイジングに必要な成分として最近注目されているのが、短鎖脂肪酸の一種である「酪酸」と抗炎症物質である「ポリアミン」※8である。酪酸は、難消化性でんぷんなどを原料に腸内の善玉菌が作り出す成分で、その働きは「腸の細胞のエネルギー源となり腸が元気になること」(大妻女子大学家政学部青江誠一郎教授)。腸内の細胞や粘膜を再生(ターンオーバー)・修復したり、ぜん動運動をサポートしたり、また炎症を抑えたりして,大腸の健康を支えている。
腸内細菌が酪酸を作り出す比率が高い食材は、難消化性でんぷん※9のほか、でんぷん、オート麦などが知られている。
ポリアミンは、すべての生物の細胞内で合成される物質で、細胞の増殖や分化に関わっている。ヒトの代表的なポリアミンは、スペルミン,スペルミジン,プトレシンと呼ばれ、分子量が200程度までの物質である。納豆やチーズなどの発酵食品や大豆、シイタケ等に豊富に含まれ、食物から摂取したポリアミンは,消化管内でそのままの形でほぼ吸収され,体内の臓器や組織に移行する。また,腸内細菌によって産生されることも知られている。
腸内のポリアミンが増えれば、腸内の細胞が再生・増殖し、バリア機能が高まるため、その補給は腸のアンチエイジングにつながる。中でも、ポリアミンの一種であるスペルミンは抗炎症作用が強く、高いアンチエイジング効果が期待できる。
また腸が、様々な消化管ホルモン(インクレチン※10)を分泌し、インスリン抵抗性をコントロールすることも最近注目を集めており、肌や寿命だけでなく、糖尿病やメタボリック・シンドロームとの関連も指摘されている。腸の健康や機能強化が、今後のアンチエイジングの主要テーマとなると思われます。


<補足説明>

※1 免疫寛容
免疫寛容とは、普通ならば応答するはずの分子や抗原に対して、固体が体液性免疫などの免疫反応を示すことができなくなった状態のことをいう。もともと免疫寛容現象は、我々が自分自身の抗原に対して免疫応答を発現しないためにある。食品などの生体にとって必要なものにはアレルギーを起こさない、つまり、抗原として認識せず免疫反応が起こらない仕組みである。しかし、なぜか解からないが自己に対する寛容性が崩れると、重篤な自己免疫疾患を生ずることがある。
例えば、卵やサバなど一般にアレルギーを起こしやすい食品を摂取してもアレルギー反応が起こらないのは、経口免疫寛容によりアレルギーが抑えられるからで、逆にアレルギーを起こしてしまう人は経口免疫寛容機構がきちんと働いていないことが原因である。
※2 抗体
抗体とは、リンパ球のうちB細胞の産生する糖タンパク分子で「抗体」という名は抗原に結合するという機能を重視した名称で、物質としては免疫グロブリンと呼ばれる。「Ig(アイジー)」と略される。すべての抗体は免疫グロブリンであり、血漿中のγ(ガンマ)グロブリンにあたる。
※3 Th1細胞とTh2細胞
リンパ球には、T細胞と、抗体(免疫グロブリン)を産生するB細胞とがある。
T細胞には、さらに、単球・マクロファージから抗原を提示され、免疫反応を調節する、ヘルパーT細胞と、ウイルス感染細胞などを傷害する、キラーT細胞がある。
ヘルパーT細胞には、Th1細胞とTh2細胞とがある。
抗原提示細胞が、IL-12を産生するか、それとも、PGE2を産生するかが、Th1細胞(細胞性免疫)と、Th2細胞(液性免疫)のどちらが優位になるのか、決定している。

Th1細胞はキラーT細胞の分化や働きを助けたり、マクロファージも活性化し、細菌やウイルスなどの異物を攻撃、破壊して感染を防ぎます。またB細胞にIgG型抗体を産生させ、Ⅱ型アレルギーやⅢ型アレルギーをおこさせます(Ⅱ型アレルギーは免疫性溶血性貧血や重症筋無力症など、Ⅲ型アレルギーは血清病や糸球体腎炎など)。Th2細胞はB細胞にIgE型抗体を作らせます。IgE型抗体はアレルゲンとくっついて、肥満細胞を刺激します。そこで、肥満細胞はヒスタミンやロイコトリエンを放出し、アレルギー症状を惹起させるのです。そのため、Th2が増えればⅠ型のアレルギー(花粉症、気管支喘息、食物アレルギー、アトピーなど)を悪化させます。
これらの細胞を分化させたり、分化後に産生されるサイトカインは、お互いの細胞群を抑制しあう性質がある。つまりTh1/Th2のバランスがお互いに拮抗しあって保たれてます。
しかし、アレルギー疾患をもつ人はTh2がTh1よりも多くできてしまうのです。
※4 Th2/Th1バランス
クラススイッチを誘導するのにヘルパーT細胞の働きが必要です。ヘルパーT細胞がどのようなサイトカインを産生してB細胞に作用させるかでつくられる抗体のクラスがかわります。TGF-β(transforming growth factor-beta)はIgAに、IL-2、IL-4はIgG1に、インターフェロンγはIgG2Aスイッチします。アレルギーの原因になるIgEはIL-4、IL-13によって促進、IL-5、IL-6によって増強され、インターフェロンγによって抑制されます。このことは、前者を産生するTh2細胞と後者を産生するTh1細胞とのバランスがIgE産生を左右すると考えられる。
※5 Toll様受容体
Toll様受容体(トルようじゅようたい、Toll-like receptor:TLRと略す)は動物の細胞表面にある受容体タンパク質(膜貫通型たんぱく質)で、種々の病原体を感知して自然免疫(獲得免疫と異なり、一般の病原体を排除する非特異的な免疫作用)を作動させる機能がある。脊椎動物では、獲得免疫が働くためにもToll様受容体などを介した自然免疫の作動が必要である。
自然免疫系が病原体の体内侵入を特異的に認識し活性化され、さらに高次機能を有する獲得免疫系の活性化の誘導に必須であることが示唆され、従来の免疫学の理論的背景を根底から見直さなくてはならない状況になっている。TLRファミリー分子は自然免疫における病原体の認識に必須の受容体である。
Toll様受容体やその他の自然免疫に関わる受容体は、病原体に常に存在し(進化上保存されたもの)、しかも病原体に特異的な(宿主にはない)パターンを認識するものでなければならない。そのためにToll様受容体は、細菌表面のリポ多糖(LPS)、リポタンパク質、細菌やウイルスのDNAに含まれる領域などを認識するようにできている。もしToll様受容体がうまく働かないと、すべての免疫システムは崩壊し、身体は感染に対して全く無防備な状態となる。その一方で、Toll様受容体が強く作用しすぎると、「関節炎」や「全身性エリテマトーデス」「心血管障害」など、慢性的で深刻な炎症を特徴とする疾患を引き起こしてしまう。TLR1~TLR5が知られている。
※6 クラススイッチ
抗体は免疫グロブリンの基本構造のH鎖の定常領域が少しずつ異なっていることによって5つのクラスIgM、IgD、IgE、IgG、IgAに大別される。IgGはさらにIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、のサブクラスに分けられます。最初はIgMが産生されますが、IgMのものからIgGのもの、IgAのものと、ひとつの細胞がそれぞれのクラスのものへと作り変えていきます。これをクラススイッチと呼びます。
B細胞は分化した当初は、IgM(とIgD)という型の抗体を合成するが、T細胞からのヘルプを受けて活性化すると、抗体遺伝子に組み換えが起こり、IgGあるいはIgE、IgAなどほかの型(クラス)の抗体を合成するように変化(スイッチ)する。この過程をクラススイッチと呼び、この組み換え過程に必須の役割を果たしているのが酵素「AID」である。
免疫遺伝子を変化させる能力を持つ酵素「AID」が遺伝子を切断するメカニズムを、京都大学大学院医学研究科の本庶佑(ほんじょ・たすく)客員教授(分子生物学)らの研究チームが動物実験で突き止めた。酵素AIDは異物を攻撃する抗体を作り出す際に働く。
※7 ヒートショックタンパク質(熱ショックタンパク質、HSPとも言います。)
ヒートショックタンパク質と呼ばれる一群のタンパク質は、熱ストレスや精神的なストレスなどによる誘導だけではなく、一部は常時細胞内に存在して、生命現象を行う種々のタンパク質の立体構造の維持・修復がメインです。高温によるストレスをうけるとタンパク質が立体構造を保てなくなり、機能を失います。その際にタンパク質が立体構造を復活するのを助けたりもします。新生時から正しい立体構造形成、輸送、そして分解までの面倒を見るタンパク質の介助役のタンパク質群です。熱は効果的に多くのHSPを個々の細胞内に誘導することができ、細胞が更にストレスに曝された時、細胞が生き延びられるように働きます。それゆえ、緊急事態に誘導されるHSPは「細胞危機対応たんぱく質」とも言える役割も担っています。
※8 ポリアミン
ポリアミンは、さまざまな生理活性を持つ低分子有機化合物です。まだ一般にはあまり知られていないのですが、最近、急速にその有用性が明らかになってきています。
ポリアミンはアミノ酸の一種であるアルギニンから細胞内で合成されます。全ての動物やヒトの細胞内で合成されますが、加齢に伴ない、ポリアミンを合成する酵素の活性が低下します。
ポリアミンは、その中にいろいろな金属を収納できます。大きければ大きいほどイオン半径の大きな金属を収納することができます。金属イオンと有機物のコンプレックスを作る。
生理作用
  • 細胞分裂や増殖の制御 ? ポリアミンがないと細胞分裂や増殖は行えない。
  • RNAなどの核酸、タンパク質などの合成促進 ? 生体内では前立腺、膵臓、唾液腺など、精子や酵素作る組織に多く含まれる。
  • 加齢によって、体内のポリアミンは減少する事が知られており、老化との関連も示唆される
  • あらゆる生体中に含まれ、細胞分裂や蛋白合成などの活動に関与している成長因子である。
われわれの体の中には、もともと天然ポリアミンが存在しています。1971年には、病気の進行度合いと尿中のポリアミン量に相関性があることがわかりました。特にこの時には、ポリアミンの量的変化を追っていけばガンの進行度合いがわかるという論文が発表されたのです。それからにわかにポリアミンの研究が盛んになってきました。その後、ポリアミンの代謝経路が解明され、病気になると血液中、体液中のポリアミン量が増すことがわかりました。
すなわち、ポリアミンのホメオスタシス(恒常性)で正常と異常がわかるようになったのです。ガンに限らず、細胞機能の異常を伴う病気であれば、ポリアミン量との相関性が出てくるのです。
※9 難消化性デンプン
通常のアミラーゼで消化されないデンプンで,食物繊維としての性質も示す。
難消化性デキストリン:水溶性食物繊維として使われる。
トウモロコシのデンプンを培焼し、アミラーゼ(食物として摂取したデンプンを消化する酵素)で加水分解します。その中の難消化性成分を取り出して調製した水溶性の食物繊維が難消化性デキストリンです。
※10 インクレチン
インクレチンは2つのペプチドホルモン GIP と GLP-1 の総称で、ずれも消化管の内分泌細胞で合成され、栄養素の摂取に伴って血中に放出される。膵臓β細胞に作用しインスリン分泌を促進する因子です。
これらのホルモンは食事由来の刺激により主として小腸のK細胞(GIP)とL細胞(GLP-1)から門脈血中に分泌され、膵臓ランゲルハンス島のβ細胞からそれぞれのG蛋白共役性受容体を介して血糖依存性にインスリンの合成および分泌を促進する。血中でタンパク質分解酵素DPP-4によって分解されなかったインクレチンは、膵臓β細胞内のcAMP 濃度を上昇させ、インスリン分泌を促進する。これ以外にも、膵臓β細胞数の増加や膵臓外作用を有しており、多彩な生理活性が糖尿病治療に応用されている(医薬品 ジャヌビア錠,エクア錠)。

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