環境とのバランス
東洋医学の基本理論とワイル博士の「動的平衡」を考えた場合、全てが共通します。それは人は常に環境と適応しようとします。そうしなければ生きてゆけないからです。体の全ての反応は、自分自身の体を防御しようと働きます。しかし、環境とバランスを保てれば良いのですが、このバランスがさまざまな要因により取れなくなってきています。
現代の日本人の病気の原因
日本は周囲を海に囲まれている上に、年間の降水量が世界平均の二倍で、しかも梅雨と秋に降る長雨があるため、年間を通して極めて湿度の高い島国です。こうした気候、風土の土地では、水分の摂取はそれほど必要としないはずです。食生活を考えても水分の少ない欧米のパン食に比べて、日本の主食のご飯は70%が水分で、それに付け加え味噌汁やその他の汁物を摂ります。特別に意識して水分を補給しなくとも食生活自体が、世界的に見ればすでにかなり水分を補給していることになるのです。それなのに最近の日本人は、清涼飲料水、コーヒー、ビール、お茶などで水分を取り過ぎています。さらに冷蔵庫が普及し、自動販売機が街にたくさんあり、いつでもどこでも冷たい飲み物が飲めるようになっています。また人が会えば、必ずお茶やコーヒーを飲む習慣があります。そしてさらに、水分をたくさん取って血液を薄めた方が良いとか、水をたくさん飲む健康法や、「何々水」が体に良い、などと言って誤った健康情報に振り回されています。欧米のような乾燥した風土では、水分を補給する必要がありますが、日本は湿度が高いため気体として水分を排泄しにくくなっています(乾燥している欧米などは不感蒸泄が過度となり、皮膚の乾燥や脱水症状を招きやすいが、日本のように湿度が高いと体表面から水分は蒸散されない)。
さらに水分だけではなく冷蔵庫、冷凍食品、冷たい食品、そして冷房、車の中の冷房などで、体を冷やしすぎています。昔の冷暖房がなかった時代はせいぜい冷やしても湧き水や井戸水程度でした。
このような食生活を送っている中で、何より大きいのは仕事や家庭など、さまざまな人間関係から生じる精神的ストレスです。またストレスにより喉が渇き、水分を必要以上摂ってしまいます(容器に入れてあるため、全部飲みほしてしまう、動物は必要以上は摂らない)。このようなことから、様々な症状が発症すると考えられます。
すなわち、日本人の多くの現代病の原因は、冷えと水分の摂りすぎとストレスです。つまり東洋医学でいうと「腎」の不足、体液の過剰、「陰」と欠乏の体質がそろった時に現れます。それをさかのぼっていくと、陰の飲食物の取り過ぎと精神的ストレスが原因です。特にアレルギー性疾患の場合は当てはまります。そして、他のさまざまな病気や症状も同様です。
従って、筋肉を使い汗をかき(この時、汗をかいたからといって水分を摂りすぎない)、微量栄養素を摂り、身体を冷やす飲食物を避け、精神的ストレスに対処することが病気を改善する近道になります。
そこで、具体的にどうすればよいかと言うと、最も大事な人間の基本的な生命を維持するための行動、すなわち、寝て(睡眠)、食って(栄養)、出す(排泄)、この一つ一つを完全に正しくできれば、病気にはなりません。しかし、現代のストレスを含めた食生活を考えたら非常に難しいのです。
ストレスや考え事をしていたのではぐっすり眠れません。食物も環境汚染、生産方法(肥料や消毒)、精製炭水化物や酸化不飽和脂肪酸、加工食品、食品添加物、「そして栄養のない食物」など、問題がたくさんあります。排泄は、体内に溜まった有害物質を体外に出す重要な役割をしています。最も重要な排泄は汗です。汗は体の老廃物を熱エネルギーに変えて出す大きな排泄器官です。汗をかくのによい方法は筋肉を使う、つまり運動です。そして最も健康に影響を与える精神的ストレスがあります。
次に、何が正しいのか、そしてどうすればよいのか解説して行きます。