人間のからだは、自分の意思で動かすことができる事(運動神経)以外、全て自律神経によってコントロールされています。消化器系、体温、血流、血圧、血糖、ホルモン、神経伝達物質など、全て自律神経でコントロールされています。従って、自律神経が変調をきたすと、免疫系、内分泌(ホルモン)系が異常をきたし、さまざまな症状が現れます。
例え、自律神経が原因でも病院に行けばキチンと病名が付けられます。これは保険制度のためです。例えば、次のような病名は、全て自律神経が原因で起こる病気です。下記以外にも病院に行けば病名は付けられますが原因が解からないことがほとんどです。病院では器質的疾患(目で見える異常)がなければ治療できないのです。機能的疾患(器官の働き)にはどう治療していいか解からず、検査値だけを頼りに、それを下げようと薬が使われます(その検査値がなぜ高くなったかは解からず)。
慢性○○○、本態性○○○、心臓神経症、不整脈、起立失調症候群、起立性調節障害、過呼吸症候群、気管支ぜんそく、偏頭痛、緊張性頭痛、過敏性大腸症候群、胆道ジスキネジー、神経性嘔吐症、反復性臍疝痛、神経性下痢、めまい、メニエール病、乗り物酔い、咽喉頭異常感症、口内異常感症、舌痛症、顎関節症、円形脱毛症、発汗異常、慢性じんましん、膀胱神経症、夜尿症、心因性排尿障害、更年期障害など。(膠原病はかなり強いストレスだと思います。)
つまり、病名(症状)は結果であって原因ではないのです。
【原因】
自律神経のバランスを崩す原因は、心理的ストレスです。自律神経には交感神経と副交感神経があり、車で言うとアクセルとブレーキの役目をしており、自動的にバランスを保っています。
例えば、イライラすると、つい食べてしまい過食になってしまいます。これは交感神経が優位になっているため、体は何とかしようと副交感神経を優位にさせようとするため食べたくなるのです。それは、胃腸を動かすことが副交感神経を優位にさせるために最も簡単なことだからなのです。
こんな状態が交感神経を優位にさせます。
- 仕事や子育て、介護などのイライラ
- 怒りや興奮
- 不安や心配事、悩みなど
- 人間関係の不調和
- 物事が思い通りに運ばない
これらのストレスがかかると、身体を臨戦体制にするために交感神経が活発に働きます。
適度なストレスは、やる気を引き出しますが、強すぎたり長く続くと交感神経が優位になったままになり、自律神経のバランスを崩してしまいます。交感神経は血管を収縮させる働きがありますので、このような状態が長く続くと、血行を妨げ、冷え性や低体温、高血圧などさまざまな症状を招きます。
交感神経過緊張がもたらす障害
- 顆粒球増多するため活性酸素の大量発生により組織破壊が起こる
- 血流障害
- リンパ球の減少
- 排泄・体中の分泌機能の低下。
こんな状態が副交感神経を優位にさせます。
- 精神的ショックでやる気が起きない
- 肉体疲労が溜まっている
- 睡眠不足
- 生活が不規則
- 刺激が少なく気力がわかない
仕事の失敗などでやる気や気力を失ってしまった、長時間の仕事や睡眠不足で疲れが溜まっているなど、こんな状態になると副交感神経が活発に働いて、身体を休ませようとします。また、不規則な生活でだらだらと過ごしたり、過剰に昼寝をしたりすると、副交感神経の働く時間が長くなりすぎ、自律神経のバランスを崩します。すると、活動低下により血液の循環が悪くなって冷え性や低体温などさまざまな症状を招きます。
【対処法】
一言でいえば、寝て、食って、出す、を正しくキチンと行えば良いのです。
人間生きていく上で最低限の行動です。
睡眠(睡眠の質)
人間は夜行性ではありません、夜(暗いとき)眠るようにできています。
私たちの身体は、昼間は交感神経が優位に働き、夜は副交感神経が優位に働くようにできています。また、脳の松果体からは夜になるとメラトニンと言うホルモンが分泌されて眠くなってきます。メラトニンは夜の8時ごろから分泌され深夜2時ごろから3時半ごろピークに達します。メラトニンの分泌量も子供の時が最も多く年齢と共に減少してきます(歳をとると睡眠時間が短くなる)。メラトニンだけでなく、年齢と共に減少するホルモンはたくさんあります。テストステロン、エストロゲン、成長ホルモン、そして性ホルモンの前駆物質で老化を防ぐDHEA(デヒドロエピアンドロステロン)などがそうです。従って、夜8時以降に運動したり、仕事の関係で夜仕事をしたり、夜中にトイレ行ったりなどして、睡眠時間がバラバラだと自律神経の変調をきたします。
人間の身体は睡眠中に回復し(ホルモンや副交感神経の働き)、記憶は睡眠中に整理されます。筋肉は夜寝ることにより弛緩され肩こりなどもとれてきます。従って、深夜2時ごろから3時半ごろは、夢も見ないような深い睡眠をとり、常にぐっすり眠ることです。そうすることによって体や脳もリセットされるのです。
この質の良い睡眠もずっと続けなければだめです。若いうちは一晩ぐっすり眠れば翌朝は元気になりましたが、症状のある人は、一週間に6日はぐっすり寝ないとリセットできません。
食事(微量栄養素・腸内環境)
副交感神経を優位にするには、腸の働きを高めることが効果的です。
腸の働きを高めるには、冷たいものを避け、肉や乳製品を減らして、食物繊維の多い食べ物をできるだけ摂るようにしてください。食物繊維が入ると、腸管は何とかこれを消化しようと、副交感神経を刺激します。
また、栄養素の大部分は腸によって吸収されます。ミネラルのほとんどが腸から吸収されるのですが、腸はストレスの影響を受けやすい臓器で栄養を吸収する際に、自律神経の影響も受けています。より吸収力を高めるのは副交感神経で、副交感神経が働いている時に腸内に食物が通過するとよく吸収されます。副交感神経が働くべき時間に、ストレスにより交感神経が優位なっていては、栄養素の取り入れ口である腸がきちんと働くことができません。
ストレスはミネラルと密接な関係があります。ストレスがミネラルのバランスを崩し病気を引きおこします。例えば、過度のストレスによって胃腸に潰瘍が出来たりする人は少なくありません。潰瘍の発生を抑制する亜鉛の血中濃度が低くなり、胃に十分供給できなくなるのが原因とみられています。ストレスによって血液中の亜鉛濃度が下がるのは、ストレスによって肝臓で生成されるメタロチオネインというタンパク質が多くなり、その際に亜鉛が大量に使われるために、血液中の亜鉛が肝臓に集められるからです。それには最適量のミネラルを常に体内に充足させておくことです。
また、腸内環境が良くないと血液もリンパ液もきれいになりません。人は血管から物を食べません。血液をきれいにするには、まず、腸がきれいでなければいけません。
腸内の細菌叢をよくすることで、自律神経や免疫系のバランンスも整ってきます。
排泄(汗・分泌機能・腸内環境)
最も自律神経の影響を受けやすい機能がこれです。交感神経が緊張しているときは、臓器や器官の排泄や分泌を調整している副交感神経の働きが抑えられます。これは、出すべきものが出せないことを意味します。出すべきものの中には、便や尿、汗のように排泄されるべき老廃物もあれば、体の中の分泌腺からの排出するすべての分泌液も含みます。例えば、唾液腺から分泌する唾液(虫歯予防には重要)や、体がブドウ糖を利用するときに必要なインスリンなどのホルモン、食物を分解するときに必要な消化酵素、白血球が相手を倒すときに必要なタンパク質など、体の働きを維持するために不可欠な物質も含まれています。交感神経の緊張では、血流障害による“ためこみ”と副交感神経が正常に働かないための排泄・分泌能の低下という二重苦を招きます。不要なものを捨てられず、必要なものは得られない、体にとって非常に悪い事態が起こることになります。
排泄の中で自分でコントロールできることは、便と汗です。便は本来、黄色から黄褐色で繊維質をたくさん含むほど良く、黒っぽかったり、コロコロしていては、腸内細菌叢が良くない証拠です。腸がきれいでなければ血液やリンパ液もきれいになりません(ミネラルの吸収にも影響する)。そこで食物繊維を豊富に含む身体を温める食物を摂る必要があります。冷やしていては腸の機能は良くなりません。そして腸管免疫を高めるとともに腸をきれいにし、胃腸を動かすことが副交感神経を優位にさせるために大事なことです。
特に重要なことは汗を出すことです。便や尿、が出ないと気にかかり、薬を使用しても排泄させようとします。しかし汗は不快で、邪魔者扱いにされ、出れば体をすぐに冷たいものや、冷房で冷やそうとします。汗は体の老廃物を熱エネルギーに変えて出す大きな排泄器官です。汗をかくのにもっとも良い方法は、筋肉を使う、つまり運動です(好きな運動)。できなければお風呂などで、うっすらと汗をかく半身浴なども良いと思います。とにかく一週間に一回とか、一か月に一回とかではなく、毎日行うことが重要です。従って、良い便を毎日キチンと出すこと、汗をたくさん出すことによって自律神経や免疫系のバランンスも整ってきます。
【最後に】
- 交感神経が緊張すると血管が収縮して全身の血流が悪くなってさまざまな症状が現れます。特に微小循環系は血液が流れなくなります。
交感神経の緊張がもたらす、もう一つのトラブルは、血液中の顆粒球が増えることで活性酸素が大量に産生されることです。活性酸素は全身のいたるところで発生し、その強力な酸化力で細胞を破壊します。これによって組織破壊が起こり、ガンや炎症性の疾患、糖尿病、動脈硬化など、様々な病気が発生するのです。体の中では、呼吸で得た酸素から発生する活性酸素、細胞の新陳代謝から生ずる活性酸素など、様々なところから活性酸素が産生されますが、活性酸素の比率では、顆粒球から放出されるものがほとんどです。交感神経の刺激で顆粒球が増加し、顆粒球は、しなくても良いものまで攻撃してしまい、さまざまな症状が現れます。
軽い症状の例として、体にできる皮膚病は、常在菌を顆粒球が攻撃するために、湿疹やかゆみがおこります。 - 現在、遺伝子レベルで病態や薬が研究されています。この病気は遺伝子異常だからなど、と良く言われていますが病気は全て遺伝子に左右されます。ただ、生まれつきの場合を除いて、その遺伝子のスイッチがいつ入るかどうかなのです。遺伝子のスイッチをオン、オフにするかはその人次第なのです。
- ストレスの原因となっている人間関係の悩みや仕事の悩み、育児・介護の悩みは、根本的に解決するのは非常に難しいと思います。ただし、何がストレスになっているのかを知ることで、少しでも軽減することはできるはずです。ストレスがない人はいません。気がつかないストレスが最も危険です。ストレスを自覚し、この症状はストレスで起きていることを認識しましょう。
頭 | 頭痛、頭が重い |
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耳 | 耳鳴り、耳のつまった感じ、メニエール症 |
口・鼻 | 口の乾き、口中の痛み、味が解からない、臭いがしない |
目 | 疲れ目、涙が出る、目が重い、目の乾き、まぶたが重い、目がショボショボする |
のど | のどの異物感、のどの圧迫感、のどのイガイガ感、のどのヒリヒリ感、のどがつまる、のどに何かひっかかっている感じ、痰がからんで出ない、鼻汁がのどにまわる |
心臓・血管系 | 動悸、胸部圧迫感、不整脈、下の血圧が高い、血圧の変動 呼吸器 呼吸困難、せきが長くつづく、息苦しい、息がつまる、息ができない、酸欠感、息切れ |
消化器 | 吐き気、腹部膨満感、下腹部の張り、お腹の不快感、胃の不快感、便秘、下痢、便秘下痢が交互に起こる。ガスがたまる、食欲不振、腹痛、お腹のあたりがチクチクする |
手 | 手のしびれ、手の痛み、手の冷え |
足 | 足のしびれ、足のひえ、足の痛み、足がふらつく、足のムズムズ感 |
皮膚 | 皮膚のムズムズ感、皮膚のかゆみ、手足に汗をかきやすい、汗が出ない、冷や汗、 |
泌尿器 | 頻尿、尿が出にくい、残尿感 |
生殖器 | インポテンツ、早漏、射精不能、生理不順、外陰部のかゆみ |
筋肉・関節 | 肩こり、筋肉の痛み、腰痛、関節のいたみ、関節のだるさ、力が入らない |
全身症状 | むくみ、倦怠感、疲れやすい、めまい、立ちくらみ、のぼせ、冷え、微熱、フラフラする、ほてり、食欲がない、眠れない、すぐ目が覚める、起きるのがつらい |
精神症状 | 不安になる、恐怖心におそわれる、イライラする、落ち込む、怒りっぽくなる、集中力がない、やる気がでない、ささいなことが気になる、記憶力や注意力が低下する |